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藤田貴大ワークショップ「待ち合わせていた風景を記録する」について

人が集うという当たり前のことが、当たり前にはできない現在。舞台作品や劇場の在り方に欠かせない一つの場所に「待ち合わせる」こと、その意味や方法について、演劇作家、一般の方々、学生、劇場で働くスタッフも含めて、一緒に考えていく、そんなオンラインワークショップを開催しました。

 

京都芸術大学舞台芸術研究センターでは、2016年から藤田貴大さんおよびマームとジプシーとの協働作業を、一般参加の地域の方、本学の学生と共に継続して行っており、舞台作品『A-S』(2016年)、『madogiwa』(2019年)をその成果として発表しています。これまでの藤田さんとの協働作業では、参加者一人一人にヒアリングをし、それを素材に舞台でのセリフや動きを立ち上げてきました。

 

今回もワークショップ参加者には、舞台作品を創造するプロセスの一番最初にあたる作業としてオンラインで藤田さんによるヒアリング作業を体験していただきました。小学生からシニア世代まで幅広い年齢層の参加者から聞き出した待ち合わせのエピソードから、藤田さんがフィクションとして立ち上げたテキスト、そして参加者それぞれの待ち合わせ場所を撮影した写真で構成したものが本特設サイト「待ち合わせていた風景を記録する」です。

 

藤田さんをはじめマームとジプシーの方々、参加者の皆様、そして学生スタッフと劇場スタッフがオンラインで集う、そのこと自体がひとつの「待ち合わせ」でした。制限された環境の中で生まれた小ぶりな作品ですが、モノローグとダイアローグ、そして写真から想起される風景の広がり、つながりをお楽しみください。

プロジェクトのアーカイブでは本プロジェクトの創造のプロセスを、学生スタッフが感じたことも交えつつご紹介しています。作品とあわせて、ぜひご一読ください。

2020

11

●企画立ち上げ

マームとジプシーとのワークショップ企画立ち上げ。感染症拡大の状況から年度当初の予定を変更しオンラインでの開催に。

2021

●参加者/学生スタッフ募集開始(1月中)

1

劇場ウェブサイトにワークショップの情報を公開。公開と同時に学生スタッフ募集も開始。

●学生スタッフ顔合わせ(1月末)

・学生スタッフ5人の初顔合わせ。

・各人のやりたいことを聞く。

 写真・ウェブデザイン/制作/舞台美術(展示)/記録 etc.

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2021

2

●ワークショップ申込締切(2月上旬)

全国から80名を超える応募が集まる。

応募者多数のため抽選し、最終的に24人に絞る

●マームとジプシー×学生スタッフ

 ミーティング①(2月上旬)

マームとジプシーと学生スタッフの顔合わせ

●マームとジプシー×学生スタッフ

 ミーティング② 

●写真受付(~2月末まで)

・ワークショップ参加者に「待ち合わせていた場所」の撮影を依頼。

 代理で学生・職員が撮影に行く場合も。

・ウェブサイトのデザイン開始

●テキスト完成

●マームとジプシー×学生スタッフ

 ミーティング③(2月中旬)

・参加者と学生スタッフにテキストを共有。

・ウェブサイトの構成やデザインの方向性決める

●マームとジプシー×学生スタッフ

 ミーティング④(2月下旬)

・ウェブデザインの進捗報告。

 テキストの見せ方などを検討。

・プロジェクトのアーカイブの原型ができる

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2021

3

ウェブサイトの構築(3月上旬~中旬)

 

ウェブサイト公開(3月25日)

学生スタッフによる感想・コメント

山田ゆり

この企画を知る少し前にたまたま地元の待ち合わせ場所について考える出来事がありました。そのこともあり、「待ち合わせ場所」という漠然としたテーマでどのような作品になるのか興味をそそられ、今回参加することに決めました。

ヒアリング当日は戦後や大学紛争という私が生まれるずっと前の京都の話から、TikTokというすごく現代的な話まで、参加者の方々の年齢層が幅広いからこそ聞ける話も多く、とても楽しい時間でした。その日の帰り道は待ち合わせと思われる人たちがよく目に留まりました。彼らにはどのような事情があり、彼らが待っているのはどのような関係の人なのか、彼らは無事目当ての人と出会えたあとどこへ行くのかなど、たくさんのことが頭に浮かび電車に乗っている50分間想像が止まりませんでした。

誰か、特に私の知らない世界で生きる方々のとても個人的な話を聞くことは日々の生活の中ではあまりよくあることではないため、今回の企画に携わりとても貴重な経験ができたと思います。

 

小野流空

今回藤田氏のWSに参加したことで、今まで感じていたはずなのに気づいていなかったその「感覚」というものを認識することができた。対談者から待ち合わせをしていた時の記憶を聞き、さらに藤田氏のテキストを読んで気づいたことは「待ち合わせをしている時、人は様々な感情を抱いている」ということだった。それはその日の楽しみなのかもしれない。久しぶりに友人と再会できる高揚感。それに反していつ会えるか分からない、場所や時間はここであっていたのかと感じる不安。空いた時間で将来の自分を考え、不安や驚きの感情を抱く。人は待ち合わせの時間に多くのことを考え、それを会った友人と共有することができていた。しかし、そんな不安を抱きながら会うことができた瞬間は必ず幸福に変わっていたのではないだろうか。私たちは今、そんな不安を感じながら人を待つことが減っている。あの時感じていた不安の感覚は今思えば幸せだったように感じた。

 

高橋菜々子

藤田さんの話の引き出し方広げ方が普通のインタビューではなく世間話しているような、フラットな感じで、話の進め方も何個かの話を聞いてその人が話題を広げやすそうなもの恋愛だったり印象深く残ってそうなものをピックアップしていて聞いている側も楽しく、貴重な体験ができました。

 

小寺春翔

舞台制作の仕事に就くために、様々な現場に飛び込んでみるというのが今の自分なりの就活です。今回の企画に参加した動機もそこにあります。正直、演劇を職にするということにとても不安を感じています。忙しさもありますが何よりも安定して生活していけるほど稼げるのか。せめて地盤のあるところに就こうと劇団より劇場という考えを持っていました。

ヒアリングが進んで行く中で、エピソードとともに様々な場所が出てきました。それは京都市内に限らず市外や県外の話も時折でてくるくらいで、自分は初めて聞く場所ばかりでした。しかし、藤田さんは「その場所のこれが好き」とか「昔そこはそんな風になっていたんですね」とその場所での思い出を共有されていました。そんなに各地に思い出があるものなのかと驚きましたが、これはある意味一つの場所に止まらず上演できる「劇団」に所属しているからこそできることなのかもしれないと思いました。仕事とともに思い出が積み重なるそんな素敵なことがあるのだろうかと演劇の仕事に改めて惹かれた瞬間でした。